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最高裁判所第二小法廷 昭和41年(行ツ)60号 判決

上告人 アンナ・フレーザー・ホーキンズ

被上告人 麹町税務署長

主文

本件上告を棄却する。

上告費用に上告人の負担とする。

理由

上告代理人エルマー・イー・ウエルテイ、同復代理人松尾敏夫の上告理由について。

論旨は、原判決は「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約」(昭和三〇年四月一日条約第一号)八条の規定の解釈を誤つたものという。

しかし、右条約八条の規定は、一方の締約国の居住者または法人その他の団体の他方の締約国内に存する不動産その他同条所定の資産に基づく収益については、右資産の所在国がこれに別段の課税方法を設けているときでも、その納税者に純所得を基礎とした課税方法を選択することを許容する旨を定めたものと解するのを相当とし、同条をもつて、右収益につきその資産の所在国の課税権に服するか否かの選択を認めたものとする所論の肯認しがたいことは、原判示のとおりである。論旨は、理由がない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。

(裁判官 奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)

上告理由

原判決には、判決に影響を及ぼすこと明かなる法令の違背がある。

上告人は、同人の昭和三四年度所得税に関し、昭和三七年十二月八日、被上告人が、所得税の決定をなし、右処分につき国税局長に審査の請求をなしたところ、同三八年一〇月三一日審査請求棄却の裁決をなしたことに関し、右所得の源泉である不動産の譲渡所得につき「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約第八条」により、アメリカ合衆国に居住する上告人に於て、日本国内の不動産の譲渡による収益について、日本国の課税権に服するか、否かの選択をなし得るところ、同人に於て、その旨の選択をしていないから、同人に譲渡所得があるものと認めて、被上告人が決定処分したのは違法である旨主張したところ、第一審の判決は同条の解釈につき、その立証趣旨を課税権を規定したものでないと判決し、原審の判決も右第一審の判決理由を援用している。

よつて、上告人は右原判決は同八条の解釈を誤つたものと考えるのでここに本上告に及んだ。

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